私 [アイマス]
「下手な鉄砲も数撃てば当たる……。下手な鉄砲も数撃てば当たる……」
私はそう呟きながらエントリーシートに、もう何度目かも分からない自己PR文を書く。
ママが居ない隙を狙って書かないと、またバカにされるのは目に見えている。
「ホントにもう、いつになったら合格できるんだろう……」
エントリーシートを書き込む手が止まって、私は天井を見上げた。
今までオーディションに落ちてきた原因って何だったんだろう……。
アイドルとして事務所に所属する為に受けるオーディション。
スカウトされてアイドルになる人だって、イッパイ居る筈。
それなのに、私にはそんな話が来たことは一度も無い。
だから自分で、アイドルの事務所に所属する為のオーディションを受けに行ってる。
「でも、何で受からないのかなぁ……」
そういえば、いつも最後までオーディションを受けさせてもらった記憶が無い。
私を見てくれている事務所の人に途中で切り上げられたり、歌っている時に退屈そうにされたり。
「多分、コレが原因なんだろうなぁ……」
他人を退屈にさせちゃいけない。
アイドルになるのに、多分一番大切なコトなんだと思う。
だけど、原因が分かったとしてもどうすれば良いのかが分からない。
そう思いながら、私は自己PR文を書く作業に戻る。
自分の良い所を考えながら一つ一つ書いていくと、自然にイッパイになっていく。
最初の頃は書く欄の大きさを考えずに書いていたから何度も何度も消したり書いたりしていたけれど、今となっては大体どれくらいの大きさの文字で書けば良いのかが分かってきた。
だからこのPR文の所だけ文字が小さくなってしまっている。
他の所は私らしく大きな字で書いているのに、ココだけ私らしさが足りない気がする。
だけど、オーディションをしてくれる人に私をちゃんと知ってもらわないと受からない気がして、どうしても多くなってしまう……。
「ふぅ……。できた!」
できたばかりのエントリーシートを掲げて、私は満足気な表情を浮かべる。
今まで受からなかった分、ほんの少しだけ自己PRを多くしてみた。
「これならきっと受かるよね!」
私は自分にそう言い聞かせる様に、大きな声を挙げて封筒に必要なモノを全部入れる。
祈るように、閉じた封筒の前で『パンパンッ!』って手を叩いて、学校のカバンの横へと置いた。
明日、学校に行く前にちゃんと出さないと……。
「……なんで受からないんだろう」
私は俯きながら、思い足取りでとぼとぼと家へ向かう。
今回オーディションを受けた所は珍しく、エントリーシートを返してくれた。
「一度、ママに相談した方が良いのかなぁ……」
でもママ、デビューしてから爆発的に売れちゃったから参考にならないかも知れないよなぁ……。
だけど、いつもなら返してもらえないエントリーシートを返してくれたって事にはちゃんと意味があるんだと思う。
「ダメもと……だよね?」
「愛……。コレじゃ受かる訳無いわよ……」
エントリーシートを見たママは、呆れた様にため息を吐く。
「ママ……何がダメなの?」
「自己PRね」
ママはバッサリと、私の自信作である自己PRを切り捨てた。
「愛、何でもかんでも詰め込めば良いって思ってたでしょう?」
ママの言葉に小さく頷く。
「それがダメなのよ。典型的なヘタクソの書く自己PR!」
ママの言葉がグサグサと鋭く私の胸に突き刺さる。
「女ってのはね、ミステリアスな方が魅力あるのよ? 愛みたいに自分をアピールしようとして何でも書いちゃダメ!」
「でも、私に『ミステリアス』なんて似合わないよぅ……」
私の反論を聞いて、ママがまたため息を吐く。
「愛~? 自己PRで自分の事を全部書いちゃったら、それだけで向こうは愛のコト、全て分かった気になるでしょう? それに、こんなに書いてたら向こうも読むのが面倒になるわよ?」
ママは、エントリーシートに赤ペンで修正を加えながら私に説明をしてくれる。
「だから必要最低限のコトだけを書いて、相手に『愛』って云う存在についての興味を持たせるの。それだけでも、違うはずよ?」
ママの言ってる事を聞きながら、私は自分の書いていた改めて自己PRを見直す。
確かにコレじゃ、読むのは面倒くさいし、読み終わったら私の事は全部分かっちゃうから話が弾まないかも知れない。
自信作だったはずのソレは、今では単なる失敗作にしかみえてこなくなっていた。
「ま、精々頑張りなさい。失敗を繰り返したら、繰り返しただけ成功した時の喜びが増すから」
エールをくれるママの言葉が、さっきまでグサグサ刺していた心の傷を癒してくれる様だった……。
今週もアイマス1時間SSに参加してみました。
使用テーマは『下手』です。
私はそう呟きながらエントリーシートに、もう何度目かも分からない自己PR文を書く。
ママが居ない隙を狙って書かないと、またバカにされるのは目に見えている。
「ホントにもう、いつになったら合格できるんだろう……」
エントリーシートを書き込む手が止まって、私は天井を見上げた。
今までオーディションに落ちてきた原因って何だったんだろう……。
アイドルとして事務所に所属する為に受けるオーディション。
スカウトされてアイドルになる人だって、イッパイ居る筈。
それなのに、私にはそんな話が来たことは一度も無い。
だから自分で、アイドルの事務所に所属する為のオーディションを受けに行ってる。
「でも、何で受からないのかなぁ……」
そういえば、いつも最後までオーディションを受けさせてもらった記憶が無い。
私を見てくれている事務所の人に途中で切り上げられたり、歌っている時に退屈そうにされたり。
「多分、コレが原因なんだろうなぁ……」
他人を退屈にさせちゃいけない。
アイドルになるのに、多分一番大切なコトなんだと思う。
だけど、原因が分かったとしてもどうすれば良いのかが分からない。
そう思いながら、私は自己PR文を書く作業に戻る。
自分の良い所を考えながら一つ一つ書いていくと、自然にイッパイになっていく。
最初の頃は書く欄の大きさを考えずに書いていたから何度も何度も消したり書いたりしていたけれど、今となっては大体どれくらいの大きさの文字で書けば良いのかが分かってきた。
だからこのPR文の所だけ文字が小さくなってしまっている。
他の所は私らしく大きな字で書いているのに、ココだけ私らしさが足りない気がする。
だけど、オーディションをしてくれる人に私をちゃんと知ってもらわないと受からない気がして、どうしても多くなってしまう……。
「ふぅ……。できた!」
できたばかりのエントリーシートを掲げて、私は満足気な表情を浮かべる。
今まで受からなかった分、ほんの少しだけ自己PRを多くしてみた。
「これならきっと受かるよね!」
私は自分にそう言い聞かせる様に、大きな声を挙げて封筒に必要なモノを全部入れる。
祈るように、閉じた封筒の前で『パンパンッ!』って手を叩いて、学校のカバンの横へと置いた。
明日、学校に行く前にちゃんと出さないと……。
「……なんで受からないんだろう」
私は俯きながら、思い足取りでとぼとぼと家へ向かう。
今回オーディションを受けた所は珍しく、エントリーシートを返してくれた。
「一度、ママに相談した方が良いのかなぁ……」
でもママ、デビューしてから爆発的に売れちゃったから参考にならないかも知れないよなぁ……。
だけど、いつもなら返してもらえないエントリーシートを返してくれたって事にはちゃんと意味があるんだと思う。
「ダメもと……だよね?」
「愛……。コレじゃ受かる訳無いわよ……」
エントリーシートを見たママは、呆れた様にため息を吐く。
「ママ……何がダメなの?」
「自己PRね」
ママはバッサリと、私の自信作である自己PRを切り捨てた。
「愛、何でもかんでも詰め込めば良いって思ってたでしょう?」
ママの言葉に小さく頷く。
「それがダメなのよ。典型的なヘタクソの書く自己PR!」
ママの言葉がグサグサと鋭く私の胸に突き刺さる。
「女ってのはね、ミステリアスな方が魅力あるのよ? 愛みたいに自分をアピールしようとして何でも書いちゃダメ!」
「でも、私に『ミステリアス』なんて似合わないよぅ……」
私の反論を聞いて、ママがまたため息を吐く。
「愛~? 自己PRで自分の事を全部書いちゃったら、それだけで向こうは愛のコト、全て分かった気になるでしょう? それに、こんなに書いてたら向こうも読むのが面倒になるわよ?」
ママは、エントリーシートに赤ペンで修正を加えながら私に説明をしてくれる。
「だから必要最低限のコトだけを書いて、相手に『愛』って云う存在についての興味を持たせるの。それだけでも、違うはずよ?」
ママの言ってる事を聞きながら、私は自分の書いていた改めて自己PRを見直す。
確かにコレじゃ、読むのは面倒くさいし、読み終わったら私の事は全部分かっちゃうから話が弾まないかも知れない。
自信作だったはずのソレは、今では単なる失敗作にしかみえてこなくなっていた。
「ま、精々頑張りなさい。失敗を繰り返したら、繰り返しただけ成功した時の喜びが増すから」
エールをくれるママの言葉が、さっきまでグサグサ刺していた心の傷を癒してくれる様だった……。
今週もアイマス1時間SSに参加してみました。
使用テーマは『下手』です。
タグ:愛
コメント 0