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一歩 [アイマス]

 風景が映し出されたスクリーンにゆっくりと文字が流れていく。
 その中に私の名前を見つけて、ほんの少しだけ嬉しさと懐かしさが込み上げてくる。
 初めて出演した映画。
 今までアイドルとして、音楽番組には何度も出演してきた。
 グラビアの撮影で、何度もカメラには撮られてきた。
 だけど、女優としては初めての演技。
 改めて観てみると他の共演者と比べて自分の演技がたどたどしくて、浮いているのが良く分かる。
 だけど、これが私の女優としての第一歩。
 アイドルとしての『三浦あずさ』じゃなくて、女優としての『三浦あずさ』の第一歩。

「あずささんお疲れ様でした」
 試写会の舞台挨拶が終って、舞台袖で待っていたプロデューサーさんが私に声を掛けてくれる。
「ふふっ。お疲れ様です」
「どうでしたか、初めての演技は?」
 そんなプロデューサーさんの言葉に、ほんの少し恥ずかしさを覚える。
「あずささん、これからはこっちの仕事の方を中心に仕事をする様になるんですから『恥ずかしい』って思ったら駄目ですよ」
 私の表情から、見透かしたようにプロデューサーさんが注意してくれる。
「それに、今までアイドルとして培ってきた事を活用していけば良いんです」
 プロデューサーさんの言っている事はもっともだ。

 カメラの前で歌う事には慣れている。
 カメラの前で写真を撮られる事には慣れている。

 今までのレッスンで培ってきた事は、芸能界で生きていく事に全て繋がっている。

 ボイスレッスン――。
 発声の基礎ができてなければ、マイクに声を拾ってもらう事さえも難しい。

 ダンスレッスン――。
 おっとりとした私にとって、会話のテンポを掴むのにとても大切だったレッスン。

 表現力レッスン――。
 演技の幅を広げる為のレッスン。
 同じセリフ、同じ声量でもこれ一つで全てが変わってくる。

 歌詞レッスン――。
 歌詞を読み解く事で、表現に幅を持たせる事ができる。

 ポーズレッスン――。
 カメラに映える動きや、身体をしっかりと留めるためのレッスン。
 これができるかどうかで、自分の動きが全然違ってくる。

「あずささん? これから、やっていけそうですか?」
 プロデューサーさんの質問に私は、ハッキリとした声で答える。
「はい。これからも宜しくお願いします!」

 今までのレッスンが、この世界の繋がっている。
 だからこれからもプロデューサーさんの力が私には必要。
 だからこれからも一緒に歩いていこう。
 ゆっくりと二人で歩いていけば、色んな景色が見られるから。

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アイマス1時間SS企画に参加させて戴きました。
お題は『映画』です。
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