モーニングティーを二人で【side:kotori】 [アイマス]
今日も天気が良い一日になりそうだわ……。
私は電車の窓から流れる景色を眺めながら、そんな事を思う。
毎日の変わらない風景でも、天気によって顔は変わっていく。
これで、シートに座る事ができたらもっと良いのだけれど……。
そんな事を考えても、この朝の出勤ラッシュの時間帯では仕方が無い。
今日も私は、揺れるつり革に掴まって事務所へと向かうのだった。
「プロデューサーさん、起きて下さい」
私は、事務所のソファに横たわって眠りに就いているプロデューサーさんを軽く揺する。
「ぅ……ん……」
プロデューサーさんは、小さく声を上げると軽く寝返りをうって、私の揺する手から逃れようとする。
……可愛い女の子が、そんな仕草をすれば可愛いけれど、いい歳をした男の人がそんな事をしても、逆に気持ちが悪い。
私は、手に持っていた缶の紅茶をそっとプロデューサーさんの首筋へと当ててやる。
「……ッ!?」
何が起こったのかが、瞬時に判断できないプロデューサーさん。
おそらく切れていた意識のスイッチが、まだ完全に繋がってはいないのだろう。傍から見れば、物凄い勢いで挙動不審な行動を取っている。
そんな中、プロデューサーさんは笑顔の私とその手に持たれている缶の姿を目撃して、ようやく自分に起きた出来事を理解したみたいだった。
「ああ、小鳥さん……おはようございます」
明らかに焦点の合わない眼で、プロデューサーさんは私に挨拶をする。
髪の毛はボサボサで、あごとには無精ヒゲが芽を出していた。
「プロデューサーさん、いくら律子さんのランクアップリミットが近いからって、無茶は禁物ですよ?」
プロデューサーさんは、ボサボサになった髪の毛を掻きながら、私の渡した紅茶のプルタブの音を鳴らす。
そして、そのまま喉を鳴らし一気に缶の中身を飲み干す。
「小鳥さん、でも、やっぱり少しでも律子と一緒にやって行きたいんですよ。その為には少し位は無理しないとダメなんです」
プロデューサーさんは、力強い視線で私の方を見据える。
さっきまで寝ぼけ眼だった目に、光が宿っているのが良く解る。
「でも、プロデューサーさん? それは律子さん自身が望んでいることなんでしょうか?」
その事を理解した上で、私はプロデューサーさんに問いかけてみる。
「プロデューサーさんが、頑張っているのは解ります。でも、それで律子さんの時間を奪ってしまうと云うのであれば、律子さんと別れて新しいプロデューサーさんに、そのプロデュースを任せた方が律子さんの為になると思うんです」
その私の言葉を訊いて、プロデューサーさんは俯き黙りこんでしまう。
キツイかも知れないけれど、律子さんの目的を考えたら少しでもノウハウを吸収できるプロデューサーさんに付いた方が今後の為にも役に立つはず。
だから、プロデューサーさんが離れたくないだけと云うのであれば、それは律子さんにとって枷にしかならないと思う。
例え、アイドルランクがギリギリ上がったとしてもその次のランクに上がる見込みは無い訳で……。
「でも、小鳥さん……」
プロデューサーさんが、顔を上げて口を開く。
「それでも、律子にとっては多少なりの糧にはなると思うんです。律子だって、最初から成功できるとは限らない訳で、そんな時に失敗例としての姿を見せておけば、その時に律子なりの対応ができると思います」
そんな事を語るプロデューサーさんの姿は、どことなく寂しそうだった。
私に言われるまでも無く、プロデューサーさん自身がその事に関しては一番良く解っているはず。
その傷を私は敢えて広げる。
残酷な事かも知れないけれど、その傷をプロデューサーさんがどのようにして癒すのかによって、プロデューサーさん自身の力に繋げて欲しい。
律子さんと一緒に居たいだけと云うのは、それはプロデューサーさんの我侭でしかないのだから、未練を断ち切って新しい娘のプロデュースをしてもらいたい。
その上で自分自身が力を付けて、もう一度律子さんをプロデュースしてトップを目指して貰いたい。
それが、お互いに一番最適な形だと私は思う。
折角アイドルとしてデビューしたんだから、私としては律子さんを応援したい。
いつまでも事務として、私と一緒に仕事をしていてはダメだと思う。
それは、律子さんの中でもその意識が芽生え始めているのだから尚更。
「小鳥さん……。小鳥さんの言いたいと思っている事は何となく伝わります。でも、コレはオレと律子の問題なんです」
プロデューサーさんの言葉が震える。
私だって、プロデューサーさんの事を嫌っている訳ではない。律子さんの事も大好き。
だから、自分で言った言葉は自分自身も傷つけている事を理解している。
「だから今回、律子と別れて次があるなら、小鳥さんの望みを実現させます」
プロデューサーさんは拳を私に見えない場所で握って、私の前から立ち去って行った。
……約束ですよ? プロデューサーさん?
「おはようゴザイマス、小鳥さん!」
律子さんが、今日もいつもと変わらない仕草で事務所のドアを開く。
「はぁ……。プロデューサー、また寝てるんですね?」
律子さんが、プロデューサーさんの姿を見て、ため息を一つ吐く。
「プロデューサーさんも、律子さんのリミットが近づいていて躍起になってますから、今日は寝かせておいてあげましょう」
「そうですね。私も今日は事務の仕事だけですし、少しでも疲れを癒してもらうとしますか!」
律子さんはそう言うと、着替えの為に更衣室へと向かって行った……。
みんなを見守るのが私の一番の楽しみなのだから……。
私は電車の窓から流れる景色を眺めながら、そんな事を思う。
毎日の変わらない風景でも、天気によって顔は変わっていく。
これで、シートに座る事ができたらもっと良いのだけれど……。
そんな事を考えても、この朝の出勤ラッシュの時間帯では仕方が無い。
今日も私は、揺れるつり革に掴まって事務所へと向かうのだった。
「プロデューサーさん、起きて下さい」
私は、事務所のソファに横たわって眠りに就いているプロデューサーさんを軽く揺する。
「ぅ……ん……」
プロデューサーさんは、小さく声を上げると軽く寝返りをうって、私の揺する手から逃れようとする。
……可愛い女の子が、そんな仕草をすれば可愛いけれど、いい歳をした男の人がそんな事をしても、逆に気持ちが悪い。
私は、手に持っていた缶の紅茶をそっとプロデューサーさんの首筋へと当ててやる。
「……ッ!?」
何が起こったのかが、瞬時に判断できないプロデューサーさん。
おそらく切れていた意識のスイッチが、まだ完全に繋がってはいないのだろう。傍から見れば、物凄い勢いで挙動不審な行動を取っている。
そんな中、プロデューサーさんは笑顔の私とその手に持たれている缶の姿を目撃して、ようやく自分に起きた出来事を理解したみたいだった。
「ああ、小鳥さん……おはようございます」
明らかに焦点の合わない眼で、プロデューサーさんは私に挨拶をする。
髪の毛はボサボサで、あごとには無精ヒゲが芽を出していた。
「プロデューサーさん、いくら律子さんのランクアップリミットが近いからって、無茶は禁物ですよ?」
プロデューサーさんは、ボサボサになった髪の毛を掻きながら、私の渡した紅茶のプルタブの音を鳴らす。
そして、そのまま喉を鳴らし一気に缶の中身を飲み干す。
「小鳥さん、でも、やっぱり少しでも律子と一緒にやって行きたいんですよ。その為には少し位は無理しないとダメなんです」
プロデューサーさんは、力強い視線で私の方を見据える。
さっきまで寝ぼけ眼だった目に、光が宿っているのが良く解る。
「でも、プロデューサーさん? それは律子さん自身が望んでいることなんでしょうか?」
その事を理解した上で、私はプロデューサーさんに問いかけてみる。
「プロデューサーさんが、頑張っているのは解ります。でも、それで律子さんの時間を奪ってしまうと云うのであれば、律子さんと別れて新しいプロデューサーさんに、そのプロデュースを任せた方が律子さんの為になると思うんです」
その私の言葉を訊いて、プロデューサーさんは俯き黙りこんでしまう。
キツイかも知れないけれど、律子さんの目的を考えたら少しでもノウハウを吸収できるプロデューサーさんに付いた方が今後の為にも役に立つはず。
だから、プロデューサーさんが離れたくないだけと云うのであれば、それは律子さんにとって枷にしかならないと思う。
例え、アイドルランクがギリギリ上がったとしてもその次のランクに上がる見込みは無い訳で……。
「でも、小鳥さん……」
プロデューサーさんが、顔を上げて口を開く。
「それでも、律子にとっては多少なりの糧にはなると思うんです。律子だって、最初から成功できるとは限らない訳で、そんな時に失敗例としての姿を見せておけば、その時に律子なりの対応ができると思います」
そんな事を語るプロデューサーさんの姿は、どことなく寂しそうだった。
私に言われるまでも無く、プロデューサーさん自身がその事に関しては一番良く解っているはず。
その傷を私は敢えて広げる。
残酷な事かも知れないけれど、その傷をプロデューサーさんがどのようにして癒すのかによって、プロデューサーさん自身の力に繋げて欲しい。
律子さんと一緒に居たいだけと云うのは、それはプロデューサーさんの我侭でしかないのだから、未練を断ち切って新しい娘のプロデュースをしてもらいたい。
その上で自分自身が力を付けて、もう一度律子さんをプロデュースしてトップを目指して貰いたい。
それが、お互いに一番最適な形だと私は思う。
折角アイドルとしてデビューしたんだから、私としては律子さんを応援したい。
いつまでも事務として、私と一緒に仕事をしていてはダメだと思う。
それは、律子さんの中でもその意識が芽生え始めているのだから尚更。
「小鳥さん……。小鳥さんの言いたいと思っている事は何となく伝わります。でも、コレはオレと律子の問題なんです」
プロデューサーさんの言葉が震える。
私だって、プロデューサーさんの事を嫌っている訳ではない。律子さんの事も大好き。
だから、自分で言った言葉は自分自身も傷つけている事を理解している。
「だから今回、律子と別れて次があるなら、小鳥さんの望みを実現させます」
プロデューサーさんは拳を私に見えない場所で握って、私の前から立ち去って行った。
……約束ですよ? プロデューサーさん?
「おはようゴザイマス、小鳥さん!」
律子さんが、今日もいつもと変わらない仕草で事務所のドアを開く。
「はぁ……。プロデューサー、また寝てるんですね?」
律子さんが、プロデューサーさんの姿を見て、ため息を一つ吐く。
「プロデューサーさんも、律子さんのリミットが近づいていて躍起になってますから、今日は寝かせておいてあげましょう」
「そうですね。私も今日は事務の仕事だけですし、少しでも疲れを癒してもらうとしますか!」
律子さんはそう言うと、着替えの為に更衣室へと向かって行った……。
みんなを見守るのが私の一番の楽しみなのだから……。
タグ:小鳥
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